2023-11-08
先日、旧統一教会の役員の方が、記者会見で、被害者のために最高100億円を供託する用意があると発言されました。「供託」と言えば、民法494条に規定されている制度であり、ある債務者が債務の弁済を債権者に申し出たにもかかわらず債権者がその受け取りを拒否したときなどに法務局に弁済金額を「供託」して法律上、債務の履行を完了したことにする制度です。この制度は、賃貸家屋の家主が借家人に家賃の値上げを要求して従来の家賃額での受け取りを拒否した場合などに借家人が法務局に家賃を供託するというように制度が利用されれています。そこで、旧統一教会が公序良俗に反する無効な寄付により被害者から受け取った金銭の返還債務を履行しようとして、あるいはその他の理由により返還すべき金銭の返還債務を履行しようとして、「被害者から受け取った金銭を返還するため被害者に金銭を持参したにもかかわらず被害者が受け取りを拒否したので被害金額を法務局に供託する」というのなら話はわかります。これは民法494条に定める供託です。ところが、旧統一教会の役員の方は「これは現在の法律上の制度ではなく」と発言されており、おっしゃる供託は民法に定める供託ではないようであり、被害金額を被害者に持参して受け取りを促す気持ちもないようです。これでは「民法にはない新たな供託制度」を国会が立法してくれたらそれに乗っかって新制度に基づく供託をすると言っているに過ぎません。「供託」の名前を出しながら実はそうではなく、国会の立法待ちの制度ができたらそれに乗っかって処理すると、他人任せのことを言っているのですから、被害者救済のやる気、本気度が疑われます。
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